← 水の原価表
2026.07.09

店には浄水器、家にはウォーターサーバー。
原価表を作っていた私が、真逆の判断をした理由

飲食店を経営していたとき、店にウォーターサーバーは置きませんでした。水道水を浄水して使っていました。

いま、自宅にはウォーターサーバーがあります。

同じ人間が、同じ水について、正反対の選択をしています。矛盾しているように見えて、そうではありません。判断の基準が同じだったからこそ、答えが逆になりました。

店で浄水器を選んだのは、1リットルあたりで見ていたから

当時、ドリンクの原価表は自分で作っていました。人に任せず、自分で数字を入れていました。「ドリンク代」という一行では管理しません。原液、水、氷、カップ、そして電気に分けます。分けなければ、どこを削れるのか、どこは削ってはいけないのかが見えないからです。

氷の原価には、製氷機の電気代を乗せます。氷は無料でできているように見えますが、機械が動いている限り、電気代は必ずかかっています。原価表に乗せて初めて、それが数字として目の前に出てきます。

飲食店が1日に使う水の量は、家庭とは桁が違います。この量に、1リットルあたり百円を超える宅配水を使うという選択肢は、原価表の上に存在しませんでした。

浄水器なら、水道代とカートリッジ代を合わせても、1リットルあたりは数円の世界です。宅配水との差は、1杯や2杯なら誤差です。しかし営業日数を掛けた瞬間に、無視できない金額になります。

だから店では、迷いませんでした。これは節約の話ではありません。使う量が多いほど、1リットルあたりの単価が全てを決めるという、ただの計算です。

それでも、家ではサーバーを使っている

では、なぜ自宅にはウォーターサーバーがあるのか。

家庭で使う水の量は、店とは比べものになりません。1リットルあたりの単価が多少高くても、月に使う量が少なければ、総額はそれほど動きません。単価の差が効かない世界に入った途端、判断の軸が変わります。

そこで残る問いは、こうなります。その差額で、何を買っているのか。

買っているのは、水ではありません。水を運ばなくていいことと、いつでも冷たい・熱いという状態です。差額は、その手間と時間に払っています。

店では、その手間を人手でまかなえました。スタッフがいて、動線があり、業務の一部として組み込めます。家庭には、それがありません。ペットボトルの箱を運び、空き容器を捨てる作業は、全部自分の時間です。

同じ計算式に、違う数字を入れた。それだけのことです。

月額料金は、4つに分解できる

ここから先が、このサイトでやりたいことです。

ウォーターサーバーの広告には、たいてい月額料金が書かれています。3,000円台の数字が並び、どれが安いのかを比べる。多くの比較サイトも、その並べ方をそのまま採用しています。

しかし、その数字は水の値段ではありません。分解すると、こうなります。

月額に含まれるもの性質
水そのものの代金使った分だけ変動
ボトルの運搬費使った分だけ変動
サーバーのレンタル料使わなくても発生
電気代(冷水・温水の保温)使わなくても発生

下の2つが重要です。使わなくても発生する費用——飲食店で言えば固定費です。水をあまり飲まない月でも、この分は出ていきます。つまり、飲む量が少ない人ほど、1リットルあたりの単価は跳ね上がります。

月額料金という表示は、この構造を隠します。だから、必ず1リットルに直します。式は単純です。

(水の代金 + レンタル料 + 電気代の概算) ÷ その月に使うリットル数。

飲食店の原価計算と、まったく同じ形です。

これから、このサイトでやること

次の記事から、実際のサービスを一社ずつ、この式に入れていきます。公式サイトに載っている料金だけを使い、確認した日付を必ず添えます。私が使ったことのないサービスについては、使ったふりをせず、公表料金からの試算であることを明記します。

安く見せる書き方も、高く見せる書き方もしません。原価表は、そういうふうには作らないからです。

※本記事に出てくる原価の水準は、筆者の実務上の感覚に基づく説明です。実際の金額は、店舗の規模・契約内容・地域によって大きく変わります。個別のサービスの料金比較は、各社の公表情報に基づいて別記事で行います。