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2026.07.10

水道管は錆だらけなのか。
74万キロのデータで確かめる

この記事の結論
  • 老朽化は事実。全国74万kmのうち23.6%が法定耐用年数40年を超え、更新率は年0.64%。全て入れ替えるには130年以上かかる
  • ただし「古い管」と「劣化した管」は別。経年化率と性能劣化の指標には、ほとんど相関がない
  • あなたが確認できるのは道路の下ではなく、自宅の給水管と貯水槽。そこは水道局の管轄外

「日本の水道管は古くて錆だらけ」。ウォーターサーバーを勧める文脈で、この話を聞いたことがあるかもしれません。

結論を先に書きます。老朽化は、統計上まぎれもない事実です。しかし、それは「錆びた水が蛇口から出ている」という意味ではありません。この2つを混ぜて語ると、判断を誤ります。

まず、数字を置きます

全国に敷設された水道管は約74万km。このうち法定耐用年数である40年を超えた管路の割合、いわゆる管路経年化率は約23.6%に達しています(2022年時点)。

そして、更新は追いついていません。同じ2022年に更新された管路は約4,800km、更新率にして0.64%。このペースで全ての管を入れ替えるには、130年以上かかる計算になります。漏水・破損事故は、年間2万件を超えています。

指標数値
全国の管路総延長約74万 km
法定耐用年数(40年)超の割合約23.6 %
年間の更新率約0.64 %
全管路の更新に要する年数130年以上
年間の漏水・破損事故2万件超
水道管の経年化率と更新率 全国の水道管 約74万km 40年を超えた管 23.6% 1年間に更新できた管 0.64% この速度では、全ての管の入れ替えに 130年以上 かかります
厚生労働省・国土交通省の公表資料、日本水道協会の水道統計に基づく数値(2022年時点)。

地域差も小さくありません。管路経年化率が最も高いのは大阪府で36.3%、次いで香川県が31.6%。最も低いのは滋賀県の16.4%です。更新率も、全国平均が0.61%であるのに対し、東京都と神奈川県は1.1%と倍近い開きがあります。

ここまでは、水道の話ではなく、財政と人口の話です。使う人が減り、料金収入が減り、直す予算が減り、直す人がいない。数字はそう言っています。

では、水は汚れているのか

ここが、この記事で最も大事なところです。

「古い管」と「劣化した管」は、同じではありません。

大和総研の分析は、経年化の事実は性能劣化と必ずしも同義ではないと指摘しています。管路の入口と出口の水量差から性能劣化を推測する「有収率」という指標を見ると、管路経年化率との相関はほとんどありません。経年化率が高いのに有収率も高い事業体が少なくなく、その典型が、水道整備の歴史が古い大都市です。

法定耐用年数40年というのは、税務上・会計上の区分です。40年経った翌日に管が錆びて崩れる、という意味ではありません。飲食店で設備を減価償却したことのある方なら、この感覚は分かるはずです。帳簿の上で価値がゼロになった冷蔵庫が、翌日も普通に冷えているのと同じです。

そして、忘れてはいけない事実があります。蛇口から出る水は、水質基準を満たすことが法律で義務づけられています。基準は、生涯にわたって毎日2リットルを飲み続けても健康に影響が出ない水準をもとに設定されています。老朽化した管を通っていても、この基準は変わりません。

本当に確認すべきなのは、道路の下ではありません

不安を感じているなら、その視線を、道路の下から自分の家に移してください。

水道局が管理しているのは、道路に埋まっている配水管までです。そこから先、敷地に引き込まれた給水管、建物の中の配管、そしてマンションの受水槽や高置水槽は、水道局ではなく建物の所有者・管理者の責任範囲です。

集合住宅で貯水槽を経由して給水されている場合、タンクの中で塩素が消費され、蛇口での残留塩素が下がることがあります。管理が行き届いていない貯水槽は、道路の下の老朽管より、はるかに直接的な要因になり得ます。

水道管の管理責任の境目 水道局が管理 浄水場 → 道路の下の配水管 水質基準を満たす義務がある区間 建物の所有者が管理 敷地の給水管 → 貯水槽 → 蛇口 点検・清掃の記録は開示を求められる 責任の境目 あなたが変えられるのは、74万キロの管ではありません。 自宅の蛇口の手前だけです。そして、そこは調べられます。
集合住宅で貯水槽を経由している場合、タンク内で塩素が消費され、蛇口での残留塩素が下がることがあります。

具体的には、次の順に確認できます。

  1. お住まいの自治体の水質検査結果を見る。水道局の公式サイトで公表されています。地域別の数値が出ている場合もあります
  2. 建物の給水方式を確認する。直結給水か、貯水槽経由か。管理会社や自治体に聞けば分かります
  3. 貯水槽経由なら、清掃・点検の実施記録を確認する。管理者に開示を求められます
  4. それでも不安なら、水質検査を依頼する。水道局が受け付けている場合があります

ここまで確認して、初めて「何を買うか」の話になります。順番を逆にすると、不安を解消するためではなく、不安を抱えたまま契約することになります。

それぞれの方式が、何を回避するのか

配管を経由した水に含まれる可能性のあるものを気にするなら、方式によって構造が違います。事実として、こう整理できます。

方式建物内の配管を通るか備考
浄水型サーバー・浄水器通る(そのうえでろ過する)何を除去できるかは、機種の性能表示で確認します
宅配水通らないボトルで届くため、建物の配管を経由しません
水道水そのまま通る水質基準は満たしています

これは優劣ではなく、構造の違いです。浄水型は、ろ過性能の範囲内で対処します。宅配水は、そもそも配管を経由しません。どちらを選ぶかは、あなたが何を気にしているかで決まります。

そして、1リットルあたりの単価は、別の記事で計算した通りです。安心は買えますが、金額は変わりません。両方を天秤にかけてください。

PR ── 建物の配管を経由しない方式

採水地から届く天然水を、ボトルのまま使う方式です。建物内の配管や貯水槽を経由しないという構造上の特徴があります。1リットルあたりの単価は浄水型より高くなります。

天然水の宅配水を見る【オーケンウォーター】

PR ── 水道水をろ過して使う方式

水道水をフィルターに通して使います。飲む量が多い家庭ほど1リットル単価が下がる構造です。何を除去できるかは、必ず公式サイトの性能表示を確認してください。

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不安を、数字に置き換える

老朽化は本当です。130年という数字は、重い。ただ、それは国のインフラ投資の問題であって、明日あなたの蛇口から錆水が出るという意味ではありません。

不安のまま高い契約をするのは、いちばん高くつく買い方です。まず自治体の水質検査結果を見る。建物の給水方式を確認する。それから、1リットルあたりいくら払うかを計算する。

その順番なら、何を選んでも後悔しません。

※管路経年化率・更新率・事故件数は、厚生労働省および国土交通省の公表資料、公益社団法人日本水道協会の水道統計に基づく数値です。都道府県別の数値は公表年度によって変動します。
※経年化と性能劣化の関係についての指摘は、株式会社大和総研の分析(2025年)を参照しています。
※水質基準は水道法第4条に基づき定められており、生涯にわたる摂取を前提に安全率を加味して設定されています。最新の数値は環境省および各自治体の公式サイトでご確認ください。
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